先日の「人生を丸ごと記録」の現実味を感じさせられた体重計に続き、
「ライフログ」についてつらつらと考えたことを書きます。
iPhoneはあまり関係ない上に、長いです。(汗
■iPhone、Twitterはライフログ取得システムとしてはまだまだ
iPhoneみたいな、常に携帯していていつでもネットにつながる
小型デバイスの登場と、Twitterみたいな多くの人がものすごく頻繁に
日常の状況を記録するようなメディアの登場によって、
ライフログが蓄積される素地ができてきた。
そういう見方ができなくもないですが、ライフログ取得のシステムは、
まだまだ発展の余地がありそうです。
というのは、iPhoneやTwitterは基本的にはユーザーが「記録する」
「投稿する」という自発的な行為をしない限りログがたまらないから。
もっと自然にログがたまらないと、データの活用の部分での大ブレークは
起きないんじゃないかな、と思うのです。
■iPhone、Twitterにより「日常」が記録されるようになった
もちろん、iPhoneによって「記録する」という行為が、いつでもどこでも
やりやすくなったこと、Twitterが、なんでもない日常のできごとを
頻繁につぶやきたくなるようなコミュニティをうまく作っている
ということは、ものすごいことです。
10年前を思い出してみると、「記録」というと公式な「報告」や「日誌」の
ほかは、何か記念日とか運動会とか祭りとかの「晴れの日」のものが
ほとんどで、日常っぽい記録といえば「個人の日記」くらい?
「今から寝る」とか「帰宅なう」とか、あんまりにも普通のことは、
何か特別な密着取材とか、調査ででもない限り記録されなかったでしょう。
それが今や、世の中の人たちがどんな普通の日常を送っているのか、
Twitterやmixiを分析すればかなりわかるだろうし、Cookpadは
レシピの検索データを企業のマーケティング用に提供する、という
事業を実際やっています(>たべみる)。
後世の学者が今の時代を研究しようと思ったら、データがありすぎて困るかも。
■無意識にデータがたまるしかけ〜人間にくっついたレコーダー
ちょっと話がそれましたが、これだけデータが蓄積されやすい状況に
なっているとはいえ、本当に何かのデータをなるべく漏れなく蓄積しようと
したら、もっと人間が意識することなく、勝手にデータがたまっていく
しかけが必要です。
そのひとつの方法は、人間がにくっついて、人間の代わりにありとあらゆる
データを記録する機械(レコーダー)を作るという方法。
なんと今年の冬には、そのような製品が発売されるそうですよ。
ViconRevueという製品ですが、これはマイクロソフトが
研究開発したSenseCamという技術をライセンスしてViconという会社が
ライセンスして販売するようです。
秋元@サイボウズラボ・プログラマー・ブログ : Vicon Revue - ライフログカメラによれば
とのこと。
また、日本でもこのSenseCamに似た「ライフスライス」というカメラが
開発されています。
■無意識にデータがたまるしかけ〜これまであった道具が媒介に
冬に発売されるというViconRevueは、きっとすごい先端技術オタク、
ガジェットオタクの人が使い始めるんでしょう…。
でも普通の人たちが使うには値段も高く、なによりもずっとそれを
ぶら下げていて動作させてなきゃいけないというのは面倒だし、
そうまでして何から何まで記録したいという気持ちが起こらない。
今後普及することはないんじゃないかなぁ…。
で、もっと現実的に普通の人にも広がりそうで、これからきっとすごい
ことになるぞ、予想されるのは、新しい機械を導入するのではなく、
これまで使っていた道具にライフログ記録の役割を持たせるという方法。
そのような仕組みの一つが、先に紹介した体重を計るたびにWifiでデータを
ネットにアップしてくれる体重計です。
これはすごくいいですね。体重を計るということ自体は、(やっている人は)
もともとやっていることで、データをためるために、追加で何かしなくては
いけないということはないのだから。
Nile + iPodでランニングのデータを記録するやつも、「走る」という
行為に加えて、後からどこを何キロ走ったなんて入力する必要がないのが
画期的でした。
私が最近使っているアプリSmartSleepも、「寝るときにタップ」というのが
今までになかった手間ではありますが、朝は「アラームを止める」という
普通の行為によって、自動的に「起きた」という記録が取られるのがいい感じ。
こういうしくみが、もっといろいろできると思うのです。
で、それはiPhoneとかパソコンとかの今ある通信機器にこだわってたら
なかなか広がらないので、冷蔵庫や洗濯機や家のドアとか、今日常生活で
使っているモノが、これからはライフログを取る媒介になるんじゃないかな。
■ライフログは歓迎すべきか、恐れるべきか?
ありとあらゆる日常の記録が取れたとして、マーケティングや統計には
使えるても、データ提供する側にはメリットなし、なんて思われるかもしれません。
でも、本人にとっても、生活が便利になったり楽しくなったりする使い方は
たくさんあるんじゃないかと思ってます。
たとえば薬瓶にセンサーが埋め込まれてて、薬が取り出されたら記録する
ようなシステムがあれば、薬の飲み忘れとか飲み間違いとかを防止できたり、
3日坊主で続かない日記は書かなくても自動で生成されたり、などなど。
一方で、何でも記録されてしまうことの怖さもすごく感じます。
データをもとに自分のことをいろいろ分析してストーキングされたり、
いいように操られたらやだな、とか、上のSenseCamで取れるような
情報は、自分だけじゃなくて自分と会った人も含むプライバシー情報の
固まりになっちゃって、取り扱いがとっても難しいだろうな、とか…。
ライフログを取るシステムと同時に、適切に使うための法整備なんかも
これからってところで、楽しみ半分、恐れ半分、注目していきたいと思います。
<参考情報>
【ライフログをモチーフにした小説】
「エクサバイト」
Sensecamみたいな記録装置を、普通の人たちも含め、みんなが体に埋め込んで、文字通り人生丸ごと記録し続けていたら…、という話。
面白いです!
<
【ライフログが絡む映画】
「マイノリティ・リポート」
主人公が街中を歩いていると、彼向けにカスタマイズされた広告が語りかけてくるところ、正にログがマーケティングに使われている例。
「イーグル・アイ」
自分に関する情報が悪用されるとこんなに怖いことが…、という話。
「トゥルーマンショー」
ライフログ、というのとはちょっと違いますが、「全部記録されてる」っていうのはこんな気持ち?
【ライフログの研究プロジェクト/製品】
MyLifebits
【コラム】シリコンバレー101 (16) 人生をHDDに凝縮する!! MS Researchの新プロジェクト「MyLifeBits」
ViconRevue
秋元@サイボウズラボ・プログラマー・ブログ : Vicon Revue - ライフログカメラ
iLogHouse
自分や家族を「記録する」未来の家がORF 2006に登場
センサーネットワークが地球を覆う。地球コンピューターの時代になってきた。
車のワイパーなどいろいろなものが媒介に情報をインターネット上に集積することで、生活に役立つ価値が生まれるというお話。
【ライフログ的iPhoneアプリ】
SmartSleep
睡眠時間を記録するアプリ
メイキング・オヴ・smartsleep for iPhone | smart sleep library -眠りの図書館-
Today+
様々な活動に費やした時間を計測するアプリ。
「ライフログ」を計測しグラフで表示するiPhone向けアプリ
iTask Timer
「Today+」同様、タスクの時間計測をするアプリ。
iTask Timer | app-store.org
NumRecorder
「Today+」や「iTask Timer」がiPhoneで時間計測をするのに対し、
こちらは、活動ごとの回数や時間を自分で入力して記録。
Twitterに投稿する機能あり。
公式ページ
Pillbox
自分や家族の薬を飲むタイミングなどを設定すると、アラームで教えてくれる。
服用薬管理アプリ
【iPhoneやTwitterとライフログに関する記事】
iPhoneとライフログ、自己分析は記録から
ライフログ的サービス、ツールがいろいろ紹介されています。
F's Garage:「食事中なう」が無意味だと?あれ?ライフログってなんだか意味わかってる?
デジモノに埋もれる日々: 立ちはだかる「記録」というコスト - スコア記録とライフログの大きな「壁」
めっちゃ参考になりました。こういうのライフログっていうんですね 勉強になりました。NumRecorderを購入しました。
投稿情報: suke | 2010年2 月 3日 (水) 00:22
sukeさん、こんばんは。
すっごい長文を読んでいただいてありがとうございます(汗
NumRecorder楽しそうですよね。
いろいろ記録してみてください!
投稿情報: eri | 2010年2 月 3日 (水) 02:16